既存の空調機制御システム
トリニティ工業株式会社様の製品の一つに塗装プラント向けの空調設備があります。既存のシステムはT.E.G.A.(Trinity Engineering Gradational Air conditioning system)と呼ばれる ソフトウェアが熱力学的な考察に基づいて、エネルギー消費量(比エンタルピー)が最小になるような最適な制御法を提案します。
一般的な空調機の制御入力は2種類のヒーターと1種類のクーラー、1種類の加湿器の計4つとなっており、マルチループ式のPID制御によってコントロールを行います。
PID制御の問題点
PID制御は扱い易い反面、特定の条件下ではハンチングや定常偏差を起こしやすく、空調制御で十分な性能を発揮させるためには、熟練した調整スキルと多くの時間が必要となります。
Smart MPC
今回、トリニティ工業株式会社様の「T.E.G.A.」のコントローラーとして弊社の最適制御AI「Smart MPC」を新たに導入。「Smart MPC」と 「T.E.G.A.」が融合した、全く新しい塗装プラント向け空調制御システムを共同開発することに成功しました。 Smart MPCは機械学習とMPC(モデル予測制御)を組み合わせた技術で、MPCの持つモデリングの難しさをデータドリブンな方法で解決します。 当技術はMPCの特性を引き継いでいて、
- 多入力多出力(MIMO)系に対応可能
- むだ時間に強く、ハンチングを起こしにくい
- 拘束条件を扱える
- エネルギーなどの最適化が可能
Smart MPCではさらに
- 機械学習による自動モデリング
- 少ないデータでも適用可能な実用性
- オンライン学習による環境変化への適応能力
Smart MPCによる改善
この動画はSmart MPCによる空調機の運転の様子です。
Smart MPCの導入によって空調機の制御性能は以下のように改善いたしました。
- 送気温度精度±1℃→±0.2℃
- 送気湿度精度±5%→±2%
- エネルギー消費量5%削減(最大で年間300万円相当 ※) ※:空調機仕様、構成、稼働時間、原動力単価等により異なります。
安定性の向上のみならず、T.E.G.A.による省エネ制御に「Smart-MPC」による動的なエネルギー最適制御が加わったことで、より大幅 な省エネ・CO₂排出量の削減に成功いたしま
今後さらなる性能向上を目指し、現在でもAIの改良を続けております。